毎年４月は初々しい新入社員の姿を見るのが楽しみです。今年の新人は最初からリモートワークに入り、ずっと自宅でWEB研修を受けているとのこと。同期のみんなでワイワイ過ごすのが楽しい時期に、本当に可哀想です。
私が大学を出て最初に勤めた会社は乃村工藝社でした。博覧会の仕事がしたくて選んだ会社です。OBに筒井康隆さんがいることも影響したかもしれません。
入社したら最初は見習い期間ですよね。バリバリ働けるわけもなく。そりゃ暇です。オフィスの電話番かコピー係でしょう、普通。クライアントへのお使いにもよく行かされたなぁ。
ある日、珍しく残業があって、同じ事業部の同期連中と一緒に夕食を取り、会社に戻る帰り道に夜店が出ていたんです。大きなタライの中には、赤や青やピンク色のカエル、カメ、カブトムシ等がいっぱい。
怪しげな店主が言うには、ゴムのようなカエルのおもちゃは水の中に漬けると何十倍にも膨らむ。一回漬けると元に戻らないので使用後の実物は見せられない。うーむ、ほんまかいな？
200円だか300円だか、たいした値段じゃないので体長３センチくらいの黄色いカメを１匹オフィスまで持ち帰りました。
給湯室にある洗面器に水を溜め、フロアカウンターの上でポチャンとカメを１匹投入しました。同期のヤツと2人でのぞき込みこと数分間。待っても待っても大きくなりません。くそー、やっぱり騙されたか。
仕事終わりで駅に向かうも、すでに終電間近。夜店の姿はもうありませんでした。
翌朝、何も考えずに会社に向かい、オフィスに入ると皆さん大騒ぎ。ーーなんだこの気持ち悪いカメは！ なんで黄色いんだ、ふざけやがって。誰のいたずらだ！ーー カメは見事に膨らんで体長20センチくらいになっていました。
「スミマセン…私です」 ーーただちに片付けなさい！ーー
良い時代でした。バブル真っ只中。働けば成果が必ずある。給料もその分毎年上がる。新しい仕事は探さなくてもやってくる。良い会社でしたよ、乃村工藝社。辞めたけど。いえ、この件で辞めたわけじゃありません。笑