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倦怠

連休中にずっと家にいるのも疲れますね。皆さん、いかがお過ごしでしょう? 私は基本的には本が好きなのですが、読書するのにも限度というものがあります。受験勉強みたいにずっと本を読み続けるのも苦痛です。

 

「人間は考える葦である」という有名な言葉は、哲学者パスカルの主著である『パンセ』の中にあります。『パンセ』の正式名は『死後、書類の中から発見された、宗教およびその他の若干の主題に関するパスカル氏のパンセ(思索)』と言うらしく、タイトル同様に中身も長い随想録です。

 

私は割とこの本が好きで、たまにパラパラめくってはフムフムと納得することがあります。ただ後半はキリスト教の話が長々続くので、日本人で最後まで読み通した人はあまりいないんじゃないかと思います。もちろん私もそうなんですけど。大江健三郎さんが『パンセ』を読みたくて仏文科に入ったとどこかで読んだので、大江さんはきっと違うでしょう。

 

『パンセ』の断章139に次の言葉があります。「人間の不幸というものは、部屋の中にじっとしたままではいられないということから起こるのだ(中略)会話や賭け事などの気晴らしに耽るのも、自宅にじっとしていられないからにすぎない」に始まり、最後は「気を紛らわすことは、世間の人々にはそれがないと惨めになるほど必要なものである(中略)倦怠が自分勝手に本来それが根差している心の底から発生し、その毒素を持って精神を満たさずにはおかない」

 

なんか矛盾してますよねー。部屋の中にじっとしていれば不幸にならないという一方で、じっとしてても毒素が精神を満たしてしまう。結局、家にいても外にいても良くないような感じに読める。まぁ、これが『パンセ』のいいところなんですけどね。人生そんな簡単には論じられまへんわ。(この断章はかなり長くて、この間に王位や狩りや賭け事、幸福などについて諸々考察されてます。)

 

長引くコロナストレスのせいで、家庭内DVが増えて、SNSも毒のある発言が散見されるようになりました。皆さん「倦怠が心の底から発生し、毒素で精神が満たさ」れてしまっているのでしょうか。ここは、部屋の外に出ると不幸な目に合うかもしれないと信じて、じっとお家で過ごしましょう。暇つぶしにパチンコ屋などに行ってはいけませぬぞ。