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エアチェックとカーペンターズ

中高生の頃、FMラジオをよく聞いていました。ラジオから流れる曲をカセットテープに収録することを「エアチェック」と言います。ラジカセで「エアチェック」――ほぼもう死語ですよね。

 

当時はレコードの貸し借りもよくやりました。LPレコードは高かったから、自分ではなかなか買えない。友達が買ったレコードを借りてステレオでカセットテープに録音して聞くのです。ステレオって最近、言うのかな? オーディオシステムことですよ。

 

高級なステレオを持っている友達はみんなから羨ましがられました。だいたいそいつが新しいレコードを買うんですよね。それで、私たち庶民はカセットテープを渡して、録音をお願いしていました。でも自分の好きなアーティストのレコードではなかったりする。

 

それで、みんなラジカセの前で「エアチェック」に励むんです。録音するテープだけは高いものを無理して買ったりして。TDK派かmaxsell派に分かれてましたよね。maxsellのちょっと高いカセットテープだと、イイ音がするような気がしたものです。ホントに気のせいなんだけど。笑

 

1982年にCDが発売されて、CDレンタルが一般化してくると「エアチェック」は廃れ始めます。好きな曲が流れてくるのをじっとラジオの前で待つのは、何ともワクワクするものでした。DJの曲紹介で「来た!」って瞬間のドキドキは何物にも代えがたい。この素敵な経験は、今の若い人には決してできません。

 

カーペンターズの『Yesterday Once More』は、まさに、このことを歌った曲です。

 

♪When I was young I’d listen to the radio

  Waiting for my favorite songs

  When they played I’d sing along

  It made me smile

 

カレン・カーペンターが亡くなった時は、とてもショックでした。拒食症というものが、世の中に認知されるきっかけになったのではないでしょうか。そんな人間的な苦悩を感じさせないような、とても美しい歌声でしたから

 

私が最高のロックグループと崇拝するクイーンは、嫌いなアーティストとしてカーペンターズを挙げています。私にとっては、どちらも素晴らしい音楽です。だけどクイーンには、カーペンターズの世界が、受け入れられなかったのかもしれません。

 

自分と異なる世界を受け入れるのは難しいことです。最近、様々な差別のことがニュースで多く取り上げられています。音楽の好き嫌いなら、まだゆるくてイイのですが、人種や宗教など生き方や存在そのものに関わることになると別です。

 

コロナショックで世界は大きく変りはじめています。デジタルの波が急激に社会を覆い始めている。カセットテープのようなアナログのいいところも忘れたくはないですが、「エアチェック」が廃れていったように、このデジタライズで差別や偏見もフェードアウトしていって欲しいものです。