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横浜と神戸

 

乃村工藝社の独身寮は、横浜市戸塚区にありました。そこに居たのは、もう30年以上も前のことです。20代の男子が30人くらい住んでるわけですから、想像しただけでも汗臭い。深夜のお風呂の湯なんて、筆舌に尽くしがたいという表現がピッタリです。

 

長閑な瀬戸内地方から突然、大都会(そういう歌謡曲がありましたねw)に出てきて、毎朝通勤ラッシュに揉まれて会社に通うのがしんどかった。神奈中(神奈川中央交通)のバスに乗り、JR戸塚駅から東海道線で田町駅に着くころには、もうフラフラ。

 

東海道線は特にひどくて、骨がミシミシ音を立てながら乗客に圧迫されると、だんだん足が宙に浮いてくるのです。今も周辺県から都内に通っている人は、あの通勤地獄を毎日体験しているのでしょうが、なんだか頭が下がります。3密の極致ですよね、あれは。

 

「横浜に住んでいます」というのが、ちょっと自慢でした。ヨコハマという響きもかっこいい。――で、横浜のどこら辺?――「と、とつか、です」――え? トツカはヨコハマじゃないじゃん――みたいな遣り取りがあったりして。

 

関西でいうと、神戸も似てますよね。垂水駅周辺に住んでいると、「それって神戸ちゃうやーん」と突っ込まれたりする。神戸市垂水区なのに。京都に至っては、JR京都駅より南を「京都や言うて欲しゅうないわぁ」と冷たくあしらわれます。エリア狭すぎです。

 

東京の感染者が増え続けています。2日連続で100名を超えました。また緊急事態宣言が出たりすると、人の移動も制限されるかもしれない。県境、市境とは不思議な線引きです。たまたま行政的にそこにラインがあるだけなのに、規制が始まると行き来しにくくなるようです。兵庫県尼崎市民は隣の大阪市に入りにくくなる。

 

神戸市の西区と垂水区は、昔は播磨の国。いわゆる播州でした。姫路と同じ領地ですから、あながち「神戸ちゃうやーん、姫路やーん」と言われても仕方ない。と書くと怒られそうですね。でも歴史は重要なんです。

 

わしらも広島と福山を同じ広島県人として一緒にされても困るけぇね。わしらは安芸の国。あっちは備後の国じゃけ。そこら辺は、やっぱし、そこに住んどらんと分からんことじゃけどのぉ。笑