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漫画と防災の日

GEKKAN-WIENより MAK特別展《漫画「日本沈没」》
GEKKAN-WIENより MAK特別展《漫画「日本沈没」》

9月1日は「防災の日」です。97年前に関東大震災のあった日です。1923年(大正12年)9月1日正午直前に地震が発生、190万人が被災、10万5,000人余りが死亡あるいは行方不明になったと言われています。スゴイ被災者の数です。

 

朝日、読売といった東京市内の新聞社社屋が焼失したなか、唯一残った東京日々新聞の9月2日朝刊には「東京全市火の海に化す」、翌3日には「横浜市は全滅」とあります。震源は実は神奈川県だったようです。

 

「ビッグコミックスピリッツ」で2006年から2008年まで連載された一色登希彦さんの漫画『日本沈没』の一場面を、今も鮮明に覚えています。壊滅的状況の都内でシュンジという好青年が亡くなってしまうのです。地震でも火災でもなく、避難民たちに殺害される…。

 

あまりのショックにその夜は眠れませんでした。当時40代後半のおっさんが、です。そもそも漫画をあまり読まない私が、たまたまランチをする店で読んでいた「スピリッツ」にそんなシーンが出てくるとは。途中まで美味しくいただいていた昼定食を全部残してしまいました。泣

 

避難民たちもシュンジも、どちらも善良な一般市民なのです。戦時下と同じく被災下にあると、人間はその異常な状態に耐えきれず常軌を逸脱した行為を行うことがある――それを見事に描いた作品だと思います。

 

「防災の日」は、地震や台風、津波などの災害にしっかり備えることを啓発する日です。ただ、すでに私たちは新型コロナ渦という災害の真っ只中にいるとも言えます。コロナのせいなのでしょうか、アメリカでは黒人の差別問題がフォーカスされている。

 

私自身、善良な一市民と思っていながら、今、正しいと思っていることも、もしかしてそれは自分よがりの正義になっていないだろうか。心の備えの方も、防災と同じく、しっかりとチェックしなければいけない時なのかもしれません。今日正しいことが、明日正しいとは限りませんから。