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目玉のおやじと心のおやじ 〜153回〜

(c)東映アニメーション 公式Webサイトより
(c)東映アニメーション 公式Webサイトより

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観てきました。家内と2人、シニア夫婦割を使って笑。アニメのために映画館に行く僕ら世代の夫婦は、まず居ないだろうと思っていたのですが、若者に混じって同年代のご夫婦がちらほら…。

 

鬼太郎、やはり永遠のヒーローです。しかし、今回はゲゲ太郎こと鬼太郎の父「目玉のおやじ」が主人公。犬神家や八つ墓村を彷彿とさせる戦後日本の闇を描いた力作と言えます。やはり日本のアニメは侮れんな。

 

着流し姿のゲゲ太郎は、なかなかカッコいい。飄々としているが芯があって人を愛する強い心の持ち主です。戦闘能力も抜群に高く、圧倒的に強い。いつも湯に浸かっている目玉のおやじが、こんなにすごいヤツだったとは恐れ入りました。汗

 

映画を見ていて、何故だか僕は、西田幾多郎を思い出しました。「鬼太郎」と「幾多郎」、着流し姿のスタイル、もしかしてゲゲ太郎は、西田幾多郎先生なのではないかと思ったくらいです。無理やりっぽいけど、本当の話。

 

ご存知の通り、西田幾多郎は近代日本で最初に独創的な哲学を創った大先生。明治維新の2年後に生まれているので若い頃の写真はまずありません。晩年の和装姿の難しい顔をしたイメージしかほとんどの方には無いと思います。

 

ただ終戦を迎える直前に亡くなられていますので、ゲゲ太郎ではなさそうですw 西田の代表作『善の研究』は文庫本を買ってみたけど、難解過ぎてまったく読み進まず諦めた書物のひとつです。カントやフーコーの方がよっぽど読みやすい。

 

素人なりに説明しておくと、西田は禅体験を基礎に仏教と西洋哲学を融合させようとした「純粋経験論」により、世界的にも「西田哲学」として有名な哲学者です。西洋哲学が「論理」で証明するのに対し、西田哲学は「直感」で意義を説く。

 

言語をあてにすることなく、非言語的なもので存在を認識できるーーなんか鬼太郎の世界観に似てますよね。「見えんけれども、おるんじゃよ」目玉のおやじの声が聞こえてきそうな気がします。

 

『善の研究』を諦めて30年近く。久々に挑戦したい気持ちが湧いてきました。東京工大の若松英輔教授が『善の研究』について言ってました。ーー「あたま」だけでなく「こころ」で、さらには「いのち」で「読む」ことが求められているーー

 

頭でっかちはいけません。何か間違ってしまう。ゲゲ太郎が「目玉のおやじ」であるように、西田幾多郎は「心のおやじ」。少年たちよ、勉強ばかりしてないで『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を見に行きましょう。PG-14だから、保護者同伴でね笑