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傷つきやすい人たち 〜156回〜

かつてお世話になった電通が、2021年から実施している「心が動く消費調査」の最新データをもとに、人間の消費行動に強く影響を及ぼす感情を分析した『11の欲望』の結果を更新し、22日に発表しました。
https://www.dentsu.co.jp/news/business/2024/0322-010704.html

分析の結果として、『11の欲望』のうち、6つの欲望の内容に変化があったとのこと。僕がすごく気になったのは、11のうちの8つ目です。電通のリリースをそのまま下に転記します。

 

⑧「炎上しないための欲望」→「肝心な時こそ気配を消したい欲望」

リアルでもバーチャルでも些細なことで もめがちな世の中で、「とにかく炎上したくない」という保守的な欲望から、すぐ炎上する時代だからこそ常に「みんな」の方に所属することで、「安心と安全を確保したい」と考える欲望に変化。「得するより損をしたくない」と考えるように。

 

気配を消したい欲望…ここに日本の危うい空気を感じます。かつてこのブログでも触れたように、過去の日本がなんとなく世の中の雰囲気に引きづられて、太平洋戦争に突入していった事実を忘れてはいけないと思うのです。

 

見田宗介は言っているーー「みんなの意見」に逆らわないように、「時代の流れ」にのりおくれないように動いていく結果、ひしめいて海に落ちてゆくペンギンの集団のように、戦争に突入していったのでした――『社会学入門ー人間と社会の未来』

 

僕のブログも政治的なことや思想的なことをなるべく避けるように、否、避けなくても柔らかく表現するように気をつけています。批判や辛辣な意見に関して、日本人、特に若い人たちの耐性が低くなっているのは多くの社会学者が指摘しているとおり。

 

自分の意見をはっきり言うことを避けるようになってしまって、本当の民主主義が成立するとは思えない。今日も、こんなことを書き連ねていると、FacebookでもLinkedinでも「いいね」の数が減るのは明らかなのです。

 

みんなが無理やり仲良くし、互いを思いやりすぎ、優しさを演じるだけの仮面ホワイト社会になって、本当にいいのかとオジサンは思ってしまいます。ハラスメントを恐れるあまり、炎上を恐れるあまり、閉口するしかない空気がどんどん濃くなっていく。

 

藤本かよこが、「いい子ぶりっ子の超偽善社会に備える」と言う副題で『ニーチェのふんどし』を著したのはちょうど1年前。とても面白い本です。こんな時代だからこそニーチェを読もうと彼女は言うのです。

 

藤本の熱い言葉を最後に記しておきます。ーーこの世界にユートピアというものが実現されるとしたら、それは、誰もが自分を呪縛するルサンチマンを蹴飛ばして、持てる力を精一杯発揮して、みながガンガン生き生きと生きている世界だと思う。ーー